Vol. 5 医療におけるIoTとは ~ 喘息吸入器は「スマートインヘイラー」へ ~ 


IoT(Internet of Things)はモノのインターネットと呼ばれ、「モノ」がインターネットやクラウドに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みのことを指す。
簡単に言うと、今までインターネットに接続されていない携帯端末、冷蔵庫、エアコン等がインターネットに繋がる、或はインターネットを介してモノ同士が繋がる、そういったコンセプトがIoTである。
携帯端末については、既にいち早くiPhoneやAndroidといったスマートフォンという形でインターネットに繋がったIoTの一つの形であり、その医療分野での活用としてメドなびで初回から前回まで各トピックを記した。今回は、携帯端末以外の「モノ」でインターネットに繋がっているサービスとして喘息吸入器にスポットを当てて紹介する。

米国のプロペラヘルス社(http://propellerhealth.com/)は、昨年、喘息吸入器に装着する自社の機器がFDA(米食品医薬品局)から承認を受けたことを発表した。この機器をつけることにより、患者が一日何回、いつ吸入器を使用したかが自動的に記録され、これにより患者、或は患者の家族はスマートフォンアプリなどでその状況がほぼリアルタイムで閲覧、確認が可能になり、より良い自己管理につながるという。
また機器にはGPSが付いており、吸入された位置データがクラウド上にアップロードされ、吸入がどこでいつ行われたかが地図上でマッピングされる。このようなクラウド上に集積されたデータを活用し、温度や空気の悪い場所では風向きなどと併せて予防的に薬剤を吸引するようにアラートを受け取ることもできるようになる。これらはインターネットと接続し機能をもっていることから「スマート・インヘイラー(賢い吸入器)」と呼ばれている。
もう一社、同様の「スマート・インヘイラー」の開発企業にマサチューセッツ工科大学からスピンアウトして製薬企業のテバ・ファーマシューティカルズに買収されたゲッコー・ヘルス社や、ニュージーランドのアドヒリアム社も同様のスマート・インヘイラーのラインナップを上市しており、アストラゼネカ社とタイアップを行っている。

日本でも気管支喘息患者数は、成人・小児共に、ここ10年で約2~3倍に増加していると言われており、現在では800万人以上とも推定されている。また喘息患者のアドヒアランスは他の慢性疾患と比べて比較的低いと言われており、アドヒアランスの向上が患者のQOLを上げ、同時に医療費も抑制も期待される。
錠剤のIoT化は、昨秋、大塚製薬は同社の統合失調症治療薬にセンサーを内包した錠剤を開発し、FDAに製造販売を申請したというニュースが発表されている。今後アドヒアランスが悪く比較的高価な錠剤には、日本にもIoT化の波はやってくると思われるが、センサーを錠剤と一緒に服薬する抵抗感は患者によっては大きい可能性もあり、また、コスト的にも将来的には下がっていくと思われるが、現時点では、価格の高い薬剤でないと実現しないと思われる。
その点、スマート・インヘイラーは通常の吸入器に装着するだけで、身体に摂取することもないので、医師としても患者としても採用する際のハードルは低いと思われる。このようなハードウェアである医療機器と、医療機器から送信されたデータを活用するソフトウェアというこれまでは別々の進化を歩んできた技術が、IoTという分野によって融合される世界がやってくると、ハードウェアとソフトウェアを横断的に見れる人材も必要になってくる。今後のわが国での動向も注視したいところである。

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