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PHR(パーソナルヘルスレコード|個人健康記録)は、個人の健康・医療情報をデジタルで一元管理し、患者さん自身が主体的に管理できるようにする仕組みです。生涯にわたる健康データを統合し、健康増進や生活習慣の改善に役立てるためのツールとして、近年注目を集めています。特に、高齢化や医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、PHRは医療機関、患者さん、さらには健常者にとっても重要な役割を果たすようになっています。
近年では、このPHRを日常的に活用できるPHRアプリの利用が広がっており、スマートフォンを通じて健康データの記録・閲覧・共有を行うことが一般的になりつつあります。
米国診療情報管理学会の定義では、PHRを次のように定義しています。
「PHRとは、患者が保持する生涯に渡るカルテであり、患者の意思決定や医療の質向上に貢献するもので、医療機関だけでなく、個人からの情報を取得し管理するものである。また、PHRは、個人が主体的に用いるもので、アクセスの検討、管理も個人が行う。」
この定義に基づき、PHRは患者自身が保持・管理するカルテとして、医療機関の電子カルテとは異なる役割を果たします。特にPHRアプリを通じて、個人が記録した情報と医療機関のデータを統合し、主体的な健康管理が可能になります。
PHRアプリは、PHRの概念をスマートフォンなどで手軽に実現するツールです。
医療機関・薬局などから提供される健康診断結果や薬の服薬履歴、処方情報や検査結果などの医療情報に加え、生活者・患者が自身で記録した体重・血圧などのバイタルデータ、日々の食事や運動などの生活習慣データも含めて記録・保存することができ、必要に応じて医療機関や薬局と共有できます。これにより、患者自身による健康管理がより日常に根付いたものになります。
スマートフォンを使って、健康情報をいつでもどこでも簡単に確認できるため、医療機関や薬局、そして外出先でも重要なデータにアクセスができます。
日々記録しているバイタル記録や食事・運動記録、症状記録など、そして調剤データなどを医療機関や薬局などとリアルタイムで共有することで、医師や薬剤師などの医療従事者との効果的なコミュニケーションが図ることができます。
血圧、体重、血糖値などのバイタルデータを簡単に記録し(必要に応じてヘルスケア機器とのデータ連携をして)、記録データの振り返りをして目標値に対する状況を確認するなどし、健康状態を積極的に管理できるようになります。
血圧、血糖値、心拍数、体重、服薬履歴などのデータを一元管理できる機能。必要に応じて、ヘルスケア機器とのデータ連携機能や、マイナポータルなどの外部システムとのデータ連携を行う機能。
調剤情報などを医師や薬剤師に共有できる機能。共有先ごとに共有する・しないといった参照先設定も可能。
薬の飲み忘れ防止や定期的な測定のリマインダーを設定できる機能。
PHRには、生活者・患者自身が記録したデータと医療機関や薬局などから提供されたデータの両方が含まれます。たとえば、血圧や体重、運動量、食事記録といった自己測定データは、スマートフォンにインストールされたPHRアプリなどに蓄積され、後日、医療機関や薬局などの医療従事者と共有することが可能となります。また、病院や診療所での検査データなどや、薬局から提供されるお薬手帳データ、さらには特定健診データもPHRに含まれます。こうしたデータを一元的に管理することで、患者は自身の健康状態を把握しやすくなり、より積極的な健康管理が可能になります。
PHRアプリは、生活者や患者さん個人が医療機関や薬局などと情報を簡単に共有するための仕組みとなります。このPHRアプリで扱うPHRデータを取り扱う際には、データの適切な管理とセキュリティが重要となります。
PHRに関する基本的なセキュリティ対策としては、厚生労働省、総務省、経済産業省が2021年4月に公表した「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」の別紙「本指針に係るチェックシート」があります。このチェックリストには、事業者が遵守すべき情報セキュリティや個人情報の取り扱いに関する項目が網羅されており、組織的、技術的、人的、物理的なセキュリティ対策が具体的に記載されています。これらの対策は、中小規模の事業者にとっても実行可能な基本的内容となっており、PHRサービス事業者はこれを参考にすることで、基本的なセキュリティ対策を確実に実施できると考えられます。
また、今後はマイナポータルを介した医療情報がPHRに統合され、医療機関等においてPHRデータが診療録に準ずる記録として活用される場合、医療情報ガイドライン(3省2ガイドライン)への対応が求められることになります。これにより、より高いレベルのセキュリティ対策が必要となるため、PHRサービス事業者は今後の規制やガイドラインの改定にも注視し、継続的にセキュリティ対策を強化していくことが重要になってきます。
近年の技術進展により、PHRアプリの活用範囲はさらに広がっています。たとえば、以下のトレンドがPHR普及を加速させています。
スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスは、血圧、心拍数、運動データを自動で記録し、スマホアプリを介してPHRに統合できます。これにより、日々の健康管理がよりシンプルになります。最近は、これらのウェアラブルデバイスはAppleヘルスケア(HealthKit)やGoogleヘルスコネクトにデータ連携されることが増えており、AppleヘルスケアやGoogleヘルスコネクトを介してのデータ連携が容易になりつつあります。
政府が運営するマイナポータルと連携することで、健診データや薬剤情報などをPHRに統合できます。PHRアプリとマイナポータルが連携することで、マイナンバーカードを使用してデータを取得できるため、シームレスな健康データの収集が実現します。具体的にはPHRアプリとマイナアプリが連携することによって、マイナンバーカードでの認証を経て、マイナポータルからこれらのデータを取得することができます。このような方法により、健康データの収集がよりシームレスに行えるようになります。
医療機関や薬局からのデータ共有が容易になり、複数の医療機関での診療データを一元管理できるようになりました。病院・診療所の電子カルテから出力されるデータについては、最近は標準規格であるHL7 FHIRのフォーマットでデータ出力がされるようになってきました。このHL7 FHIRを活用して医療機関の電子カルテから出力された処方データや検査値データなどを患者アプリに取り込めるようにし、患者が公開することに同意した医療機関にのみ、患者アプリから他の医療機関にその蓄積されたデータを公開していけるようなサービスも登場し始めています。
血圧、血糖値、体重、運動量といったデータをアプリに記録し、健康管理をサポートします。これにより、生活者や患者さんは医師や薬剤師、管理栄養士等の様々なステークホルダーと共有できる詳細な健康情報を持ち、診療時や服薬指導時のコミュニケーションが向上します。なおオンライン診療やオンライン服薬指導が進む中においては、このようなPHRデータによる確認が有効であると考えられます。また企業における健康増進や、健保組合における重症化予防という領域においても、このようなPHRデータを活用した管理栄養士や保険師による栄養指導なども体重管理など生活習慣予防の面で有効であると考えられます。
患者さんが自身の体調や治療経過を記録し、そのPRO(Patient Reported Outcome)データをスマートフォンを使って医療スタッフに報告するシステム。従来PROは院内で紙媒体を用いられていましたが、スマートフォン端末などの発展に伴い、ePROが用いられつつあります。その利点としては、データの質向上や収集データのエラー削減、データ入手率の向上、データへのタイリーなアクセスが可能になるなどのことが挙げられます。ePROで使われる評価項目に加え、日常のPHRデータを組み合わせることで、医療アウトカムの改善などが期待されます。
製薬会社や医療機器メーカー等が提供するアプリやLINE公式アカウントを通じて、患者さんに医療情報を提供し、治療アドヒアランスを支援する取り組み。これにより、患者さんの自己管理が容易になります。患者支援プログラムは、一方的な情報提供のみでなく、スマホアプリやLINE公式アカウントなどを使って患者にて症状を記録し、その症状記録を診察前に振り返えることで、医師との診察時のコミュニケーションを支援します。
ナラティブなデータである病気体験記もPHRアプリに含まれます。メディエイドは、がん患者さんとその家族向けに闘病記サイト「ライフパレット」を運営し、患者同士が病気体験を共有できる場を提供していました。このようなデータは、医療や健康の見直しにも役立ちます。
※メディエイドでは、これまでがん患者・家族のための闘病記サイト「ライフパレット」を運用していましたが、本サイトはこのような位置づけになります。ライフパレットは、2024年5月末で閉鎖いたしました。
PHRアプリは、少子高齢化社会において生活者・患者さんのエンパワーメントを促進し、医療リソースの効率化に寄与するための仕組みです。生活者・患者さんが健康・医療情報を主体的に管理することで、自己管理型医療が進展し、診療の質が向上します。今後、PHRアプリのさらなる普及によって、よりパーソナライズされた医療サービスが実現し、生活者・患者が自分の健康データをもとに意思決定を行う未来が期待されています。
メディエイドではPHRプラットフォーム「LiNQ-CIRCLE|リンクサークル」を独自に構築し、PHRアプリ「LiNQ-Palette|リンクパレット」をの提供を行っております。これにより生活者・患者さんが安心してPHRデータを管理し、そして必要に応じて、医療機関や薬局などの医療ヘルスケアステークホルダーとの情報共有を可能にしています。
またPHRアプリ開発としては、製薬企業様や医療機器メーカー様、調剤薬局様と以下のような患者支援アプリの開発もしてきました。LINE公式アカウントでPHRアプリを実現しているケースもあります。
■これまでのPHRアプリ開発事例
<ヘルスケアアプリ>
・お薬手帳プラス(電子お薬手帳アプリ)
・MNAプラス(MNAによる低栄養チェックやフレイルをチェックするアプリ)
・体重管理プログラム
・企業向け血圧管理システム
<患者向けアプリ(Patient Support Program|PSPアプリ)>
・ライフパレット食ノート(食事管理アプリ)
・ライフパレットダイアベティス(血糖値およびインスリン投与管理アプリ)
・すくすく成長曲線(お子さん向けの成長曲線管理アプリ)
・マイエピ(アレルゲン管理アプリ)
・IBDホーム(IBD患者さん向け症状管理アプリ)
・アトピー性皮膚炎治療薬利用者向けLINE公式アカウント(症状および薬剤記録アプリ)
・ハピるん(全身性エリテマトーデス(SLE)患者さん向け症状管理アプリ)
・CareDiary(ファブリー病患者さん向け症状管理アプリ)
PHRアプリ「LiNQ-Palette(リンクパレット)」
日々の健康・医療データを記録・管理できるPHRアプリです。
服薬やバイタル、食事記録などのPHRデータをスマートフォンで一元化し、医療機関や薬局との情報共有もスムーズに行うことができます。
様々なPHRのミニアプリが搭載されており、このミニアプリなどを活用したヘルスケアアプリの開発なども可能です。
▶ PHRアプリ「リンクパレット」を詳しく見る
PHRコミュニケーションツール「LiNQ-Pad(リンクパッド)」
「LiNQ-Pad|リンクパッド」サービスは、生活者・患者中心の医療ヘルスケアを実現するためのDXを実現するためのデジタルソリューションです。
患者さんがPHRアプリ「リンクパレット」を通じて記録した自らの医療・健康情報を安全に管理し、薬局、医療機関、管理栄養士などとつなぎ、必要なときに薬局・医療機関・管理栄養士等とスムーズに情報共有できる仕組みを提供します。
処方箋送信や服薬指導の管理、バイタルデータの参照、オンライン栄養指導など、医療現場の業務を効率化しながらも、生活者・患者さん中心の医療ヘルスケアを支援します。これにより、医療従事者が患者さんに向き合う時間を確保し、質の高い医療サービスを提供できる環境を実現しています。
▶ PHRコミュニケーションツール「リンクパッド」を詳しく見る
当社では、PHRプラットフォーム「LiNQ-CIRCLE(リンクサークル)」を基盤として、患者向けアプリ(PSPアプリ)の企画・開発支援を行っています。
製薬企業、医療機器メーカーなどの皆さまの課題に合わせたPSPアプリ開発をご提案します。LINE公式アカウント上での対応も可能です。
▶ 患者向けアプリ(PSPアプリ)開発を詳しく見る
ヘルスケアアプリ開発をご検討中の医療ヘルスケア関連の事業者・自治体の方へ
PHRプラットフォーム「リンクサークル」を起点に、ビジネス設計・UXデザイン・医療ヘルスケア知識を融合し、共創でサービスを支援します。
メディエイドでは、医療情報ガイドライン(3章2ガイドライン)に準拠した PHRプラットフォームを保有しており、この基盤を活用することで、一からの開発ではなく、既存のモジュールを柔軟に組み合わせた効率的なアプリ開発が可能です。
まだ構想段階のアイデアについても、デザイン思考に基づく共創プロセスを通じて、実現に向けた伴走をいたします。
▶ 医療DXソリューションサービス(ヘルスケアアプリ開発を含む)を詳しく見る
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