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PSP(患者支援プログラム)

患者支援プログラム

医療ヘルスケアに対する意識変化

インターネットの普及によって患者やその家族が今まで入手できなかった情報にアクセスできるようになったことや、患者自身がSNSで病気体験を投稿するようになることで患者のライフスタイルやライフステージに応じた治療オプションの存在が広く認知されてきた。
また国が健康増進・予防・健康管理などに関する取り組みを推進し、企業においても健康経営という取り組みが浸透し始め、自身のライフスタイルや価値観に応じた、自分なりの健康維持やセルフケアへの意識が向上してきた。さらには昨今のコロナ禍を経て、健康に対する意識や興味が増大してきた。
さらにはAppleWatchやFitbitを始めとしたウェアラブルデバイスにより日々の健康状態をデータとして取得できるようになり、自身の健康状態をより身近に容易に管理できる環境が実現されつつある状況になってきた。このような記録された情報は、データとして可視化され、診察時に医師に対してより正確な情報の伝達が可能にもなってきた。

患者による治療参加の重要性

このような医療ヘルスケアに対する意識の変化により、自身の健康状態を把握することに対して前向きな人が増えてきた。同時に、これまで医師、医療従事者任せだった治療法の選択について、患者自身が治療法を選択するにあたり、より主体的な役割を担うことの重要性が増してきた。
このように患者およびその家族が治療への参加度合いが増す中で、健康増進や未病・予防といった予防的な健康管理、疾患を認識してからの診断、確定診断に基づく治療を経て、その後の生活に至るまでに患者がたどる「ペイシェント・ジャーニー」の重要性がクローズアップされるようになってきた。
診断の弊害や、治療や病気との共存に関するアンメット・メディカル・ニーズ(満たされていない医療、治療ニーズ)を明らかにし、多様化するペイシェント・ジャーニーに沿ったケアの実現が求められつつある。
患者の健康状態、特にQOL(生活の質)については、治療内容のにではなく、日常生活情報や精神的な面などを含めた社会的な要因によっても変わってくる。そのためペイシェント・ジャーニーの対象は、医療従事者や患者そして家族にとどまらず、患者を取りまくあらゆる医療ヘルスケア・ステークホルダーに及ぶ。

患者支援プログラム(PSP:Patient Support Program)

患者そして家族に関わるすべての医療ヘルスケア・ステークホルダーが連携し、患者そして家族の声を反映しながらQOL(生活の質)向上に寄与する包括的なサポートを提供する必要性が高まっており、このような中でPSP(Patient Support Program:患者支援プログラム)が注目を集めている。
これは、患者の本質的なQOL向上を最優先課題とし、・患者の心身の健康状態の維持・改善・治療に対するアドヒアランス・最終的な治療アウトカムなどの向上を目的として、医療ヘルスケア業界が患者中心主義(ペイシェントセントリック)のサービスを提供するものである。
例えば、製薬企業等が医療機関や主治医から紹介されて同意を得られた特定の医療用医薬品を処方されている患者(患者が小児の場合はその保護者、高齢者の場合には介護者も対象)に対して、電話等によって以下のような情報を積極的に提供することを、患者支援プログラムという。
・高額療養費、指定難病、介護や生活支援など社会保障制度に関する情報
・日常生活及び学校生活における注意点や工夫の仕方(体温調節ができなくなる疾患の場合、暑い日には濡れたタオルを首に巻くと良い等)
・当該医薬品の添付文書、インタビューフォーム、くすりのしおり、適正使用ガイド、患者指導資料に記載されている有効性と安全性、品質に関する情報
・隔日や週次投与など、投与スケジュールの管理に資する情報及び服薬状況の確認
・学術誌や各種学会が公表している診療ガイドラインに記載されている当該疾患の発症メカニズム、症状、治療法などに関する確立されている情報
最近はスマホアプリを使って患者が症状を記録し、その記録されたPHR(Personal Health Record)を使って診査前にこれまでの症状を振り返ることで、医師との診察時のコミュニケーションを支援するような仕組みを提供するようなケースも出てきている。

患者支援プログラムによる医療ヘルスケア・ステークホルダーのメリット

PSPを導入することで、各ステークホルダーには以下のようなメリットが出てくる。
製薬企業においてはコロナ禍以降、訪問回数も減っていることから、このようなデジタルを活用したPSPでは様々なメリットも得られる。
・患者
  疾患/薬剤についての理解向上
  治療モチベーションの向上、治療不安の軽減
  アドヒアランスの向上
  QOL向上

・医療者
  患者指導への活用
  タスクシフトによる負荷軽減

・製薬企業
  患者理解(患者の声を活用できる)
  アドヒアランスの向上(薬剤価値向上)
  企業イメージ向上
  適正使用の推進