電子カルテとPHR連携

電子カルテとPHR連携

— 医療と生活をつなぐための設計と実装アプローチ —

はじめに

医療DXは、世界的に「医療情報を患者自身が活用できる形へ変えていく流れ」の中で進んでいます。

日本でも、電子カルテの普及やオンライン資格確認、マイナポータルを通じた医療情報閲覧など、医療情報のデジタル化が進みつつあります。

一方で、医療機関に蓄積される診療情報と、生活者が日常で記録するPHR(Personal Health Record)は、依然として分断されているケースが少なくありません。

本記事では、海外・国内の制度や標準規格の動向を踏まえながら、電子カルテとPHR連携の背景と、今後求められる設計について整理します。

1.海外で進む「患者中心」の医療データ連携

米国では、Centers for Medicare & Medicaid Services が推進する相互運用性政策により、患者が自身の医療情報へアクセスできる仕組みの整備が進められています。※¹
2020年にはCMSが「Interoperability and Patient Access Final Rule」を公開し、対象となる医療保険者に対して患者アクセスAPIの提供を求めました。
これにより、患者はスマートフォンアプリ等を通じて、自身の診療情報へアクセスできる環境が整備されつつあります。

また、この連携を技術的に支えているのが、FHIR (Fast Healthcare Interoperability Resources)です。※² FHIRは、HL7によって策定された医療情報交換規格であり、REST APIやJSON/XMLといったWeb標準技術を利用して医療データを扱えることが特徴です。
FHIRでは、Patient(患者情報)やObservation(検査・バイタル情報)など、リソース単位でデータを表現します。


2.FHIRは、医療専用の閉じた規格ではない

FHIRの特徴は、REST APIやJSON/XMLなど、Web標準技術をベースに設計されている点にあります。
そのため、従来の医療情報規格と比較して、モバイルアプリやクラウドサービスとの接続性が高いことが特徴です。

実際に、Apple は、iPhoneの「ヘルスケア」アプリにおいてFHIRを採用しています。※³
Appleは2018年に「Health Records on iPhone」を発表し、FHIRベースで医療機関の診療情報をiPhone上で閲覧できる仕組みを公開しました。

これにより、患者は自身のアレルギー情報、処方情報、検査結果などをスマートフォン上で確認できるようになっています。

これは、FHIRが単なる“病院間連携”のための規格ではなく、生活者向けサービスとも接続可能な標準として広がっていることを示しています。

また、CMSが公開している「Best Practices for Payers and App Developers」では、HL7 FHIR Release 4.0.1 を用いた Patient Access API の実装が前提とされており、OAuth2やSMART on FHIRを含めた実運用レベルでのAPI設計についても整理されています。※⁴


3.日本における医療DXの現状

日本でも、厚生労働省 を中心に医療DXの推進が進められています。※⁵

2022年には政府の「医療DX推進本部」が設置され、全国医療情報プラットフォームの整備や電子カルテ情報共有サービスなどが進められています。

また、マイナポータル では、薬剤情報や特定健診情報などの閲覧が可能となっています。※⁶

一方で、電子カルテとPHRが標準的に連携しているケースは、まだ限定的です。

医療機関ごとにシステム構成が異なることや、データ連携仕様の違いなどから、生活者側サービスとの接続には個別対応が必要になるケースも少なくありません。


4.なぜ電子カルテとPHRはつながりにくいのか

電子カルテとPHRの連携が進みにくい背景には、複数の要因があります。

1. 医療機関ごとにシステム構成が異なる

電子カルテはベンダーごとに構成や実装が異なり、接続方式も統一されていない場合があります。

2. 医療情報の標準化対応が途上にある

FHIRをはじめとした標準規格の普及は進みつつあるものの、実運用レベルではHL7 v2や独自仕様が混在しているケースもあります。

3. セキュリティ・運用要件が高い

医療情報は要配慮個人情報を含むため、高いセキュリティ要件やアクセス制御が求められます。


5.FHIRによって何が変わるのか

FHIRの特徴は、「医療データをWeb標準で扱えること」にあります。
FHIRでは、REST APIベースで医療データを取得・更新でき、JSON形式で扱えるため、Webサービスやモバイルアプリとの接続性が高まります。

実際にFHIRでは、以下のようなリソース単位でデータを管理します。

  • Patient:患者情報
  • Observation:検査・バイタル情報
  • Condition:疾患情報
  • MedicationRequest:処方情報

これにより、従来は閉じたシステム内に存在していた医療情報を、標準的な形で連携しやすくなります。


6.段階的な連携という考え方

電子カルテとPHRの連携では、一度にすべてを統合するのではなく、段階的に連携範囲を広げていくアプローチも重要です。

たとえば、

・特定データのみの連携

・一部業務でのPoC(実証)

・API単位での接続検証

など、小規模から始めることで、運用面やセキュリティ面を確認しながら進めることができます。
FHIRはREST APIベースであるため、こうした段階的な接続設計とも親和性があります。


7.電子カルテから生活者接点までを見据えた設計へ

電子カルテとPHRの連携では、単なるAPI接続だけではなく、

・電子カルテ側のデータ構造理解

・FHIRを踏まえた標準化対応

・セキュアなデータ連携

・生活者向けUX設計

・継続的なコミュニケーション設計

までを含めた、包括的な設計が重要になります。
また、すべてを一度に統合するのではなく、PoC(実証)や段階的なAPI連携など、小規模から検証可能なアプローチも重要になります。

メディエイドでは、PHR・生活者接点・コミュニケーション設計に加え、FHIRや電子カルテ連携に関する知見を持つパートナーとも連携しながら、構想段階から実装までを一体的に支援しています。


8.まとめ

電子カルテとPHRの連携は、単なるシステム接続ではなく、医療情報をどのように生活者・患者さんへ戻し、そして生活者・患者さんを起点として、医療機関や薬局などの医療ヘルスケアとの接点をどのように変えていくかというテーマでもあると、私たちは考えています。

海外ではFHIRを基盤とした患者中心のデータ連携が進み、日本でも医療DX政策の中で情報共有基盤の整備が進められています。

今後は、標準規格やAPIを活用しながら、治療領域においては医療機関から生活者・患者さんへのコミュニケーションを、そして予防領域においては生活者・患者さんから医療機関へのコミュニケーションを、どのように設計していくかが重要になっていくと考えられます。


9.共創・ご相談について

電子カルテとPHRの連携は、単なるシステム接続ではなく、「医療と生活をどうつなぐか」という設計の問題でもあります。

メディエイドでは、PHR・生活者接点・コミュニケーション設計に加え、FHIRや電子カルテ連携に関する知見を持つパートナーとも連携しながら、構想段階から実装までを一体的に支援しています。

・電子カルテ側のデータ構造理解

・FHIRを踏まえた標準化対応

・セキュアなデータ連携

・生活者向けUX設計

・継続的なコミュニケーション設計

など、構想段階からお気軽にご相談ください。医療と生活がつながる体験を、共に設計していければと思います。

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