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HL7(*)とは、コンピュータ間での医療⽂書情報のデータ連携を標準化するための国際規格です。日本の医療情報分野においては、医療情報交換のために厚生労働省標準規格として制定されている規格として、HL7 version 2.5やHL7 CDA release 2等の国際標準規格に準拠したものとなっています。これら規格を活用し、医療機関内の診療、処方・検査・会計等のオーダリング、また医療機関間での地域医療連携等様々な形で医療情報の交換が行われています。
しかしHL7 version 2.5(テキスト)は策定されてから時間も経過し、後継として2005年にversion 3(XML)が標準として確立されたが、複雑な規格となっており、セキュリティ・弾力性・伸縮性・運用保守性・相互運用性等のメリットがある機能やサービスなどを分散化して処理する現在のWeb技術の動向になじまないという状況でした。一方、海外では新しい標準規格であるHL7 FHIRが、普及しているオープンなWeb技術を採用し(Web通信での連携)、相互運用性を確保できる実装しやすい規格として注目されていました。
(*)Health Level Sevenの略で、「医療情報システム間のISO-OSI第7層アプリケーション層」に由来している。米国のHL7協会本部では数多くの技術委員会を組織し新しい標準の研究・作成を行っており、会員(米国及び国際支部国)の承認後発行される。日本においても大学病院などのシステム化や各種の標準化活動において本標準が採用されている。
FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources) は、HL7 Internationalが開発した医療情報交換の次世代標準フレームワークで、医療データの相互運用性を高め、患者と医療機関のデータ交換を効率化するために設計されています。このFHIRという名前は「ファイア」と発音し、
の頭文字をとっており「手早く設計し導入できる保健医療分野の相互運⽤性リソース」という意味であり次のようなメリットを提供します。
FHIRの利点としては、以下が挙げられます。
電子カルテなどの医療機関からのデータは、これまでSS-MIX2データ形式で出力され、そのデータが地域の医療などで利用されていましたが(地域医療連携)、FHIRを用いて医療機関側からのデータ出力を行えるようにすれば、そのデータを地域の医療機関のみでなく、患者のスマートデバイスに対して出力させることが、これまでよりも低コストな開発で実現可能となります。
現在、国で進める「全国医療情報プラットフォーム」には各電子カルテからFHIR形式での情報が連携されるように進められています。
医療データの標準規格として、FHIRはPHR(Personal Health Record|個人健康記録)と医療機関のデータを統合するための技術的な基盤を提供しています。PHRは、患者が自分自身の健康データをデジタルで管理し、医療機関や薬局と容易に情報を共有できる仕組みですが、これを支えるのがFHIRのような相互運用性を備えた規格です。
例えば、病院や診療所で生成される電子カルテ(EHR/EMR)データをFHIR対応のフォーマットで出力し、それをPHRと連携することで、患者が自身のデータをスマートフォンやウェアラブルデバイスで一元管理できるようになります。このデータは、診療や服薬指導の際に活用され、より適切な医療サービスを受けるためのサポートとなります。
Apple社においては、2018年1月にiOS11.3から標準でFHIRをサポートするようになりました。今後は患者(そして消費者)自身が自分のPHRデータを管理することへの傾向が加速されると思われます。
FHIRの採用により、PHRとEHR(電子健康記録)の融合が進み、患者の健康管理がよりスムーズに行えるようになります。たとえば、患者はPHRを通じて自分の診療記録や検査結果をスマートフォンで確認し、医師に直接共有することで、医療の質を高めることができます。
また、医療DXの一環として、日本でもFHIRを活用した全国医療情報プラットフォームが進行しており、地域医療や公衆衛生の分野でのデータ連携が期待されています。今後は、FHIRとPHRを組み合わせた新たなデジタルヘルスケアサービスが普及し、患者がより能動的に医療に関与できるような、患者エンパワーメントが進んだ未来が訪れるのではないでしょうか。
PHRについての詳細な解説はこちら
PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)は、生活者・患者が自身の健康情報をデジタルで管理し、必要に応じて医療機関と共有できる仕組みです。LiNQ-PadはこのPHRの活用をさらに促進し、より高度な医療サービス提供を可能にします。
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