UXとは?

UX(User experience)という言葉を耳にしたことはありますか?
この言葉は、Webサイトやアプリ、さらには日常の製品やサービスを使う際の「体験」全般を指します。UXは、単にWebサイトやアプリなどを利用しているときに影響を与えるデザインや機能性、ユーザーが感じる快適さ、使いやすさのみではなく、Webサイトやアプリを利用する前の期待、そして利用した後、さらには利用全体を通じて感じた価値観なども含めた体験全体のことを指します。
つまりUXとは、単純に見た目や機能がよいという狭い内容ではありません。

UXが必要となる理由

これまでのシステム開発におけるプロセスとは、B2Bがメインであり、顧客から提示された要件があり、この要件に対してシステムを開発するということがシステム開発の主なプロセスであったと思います。
しかしスマートフォンの登場によってシステムとはB2Bの世界のみで利用されるものから、一般の利用者がスマホを通じてシステムに日常的に触れ合う世界となり(エンドユーザーコンピューティング)、それはコロナ禍を経てさらに加速し、使い勝手などを決める主体が完全に利用者側に移ったということだと考えています。

これによって要件定義フェーズというのは、B2Bでのシステムのように要件が明確であった顧客とのすり合わせによって要件定義が終わっていたものが、エンドユーザーコンピューティングによって利用者の中になんとなく存在する解を求め、それを探しだすことが求められるようになったのではないか、と感じています。
つまり、プロダクトアウト的に企業がこれといって出したWebサイトやアプリを通じたサービスは正解ではなく、利用者の中にある体験がどのようになっていて、何に本来は価値を感じていて、どのようなサービスを提供すれば、現在の利用者の中にあるその感じていた価値が向上するのかということを探ること(ユーザーモデリング)、そしてそのためのサービス、さらにはそれを実現する機能が何なのかを知ることが、従来の要件定義に置き換わったと考えています。
ユーザーモデリングの絵としては、このようなイメージがもっとも分かりやすいと思いますが、ユーザーの具体的なキャラクターを明確化するためにペルソナを作り、そのペルソナがどのような体験をするかをカスタマージャーニーマップに示し、本来どのような体験価値を求めているのか、その体験価値を提供するにはどのようなプロダクト・サービスを提供すればよいかを考えることが求められるようになった、と考えています。

UXデザイン

UXデザインとは、前述した利用者の体験価値を探り、体験価値を向上させるためのプロダクトを作り出すことです。そのプロダクトをデジタルサービスとして捉えた場合には、どのような機能があり、それを実現するためにはどのようなデータ向上で画面構成で、デザインなのかを決めていく必要があります。このようなUXデザインのプロセスを可視化したものが、UXデザインの5段階モデルではないか、と考えています。

医療ヘルスケア領域でのUXデザイン

利用者を起点にしてUXデザインをした場合に、利用者が思っているのはそうであっても医療ヘルスケア領域においては、①各法令による制約、②実現する場合の医療ヘルスケアならではの商流、を考える必要があります。また実現するにあたってはテクノロジー面での要素も昨今では国が進める医療DXの流れなどもあり強く影響してきますので、そのような考慮も必要です。
つまり他業界に比べて、単にユーザーモデリングをして実現まで持っていこうとするには、
 ・医療ヘルスケア領域の知識(法的な側面、業界での常識的な知識など)
 ・ビジネスの知識(制約条件が多い中で収益を上げるための具体的な方策)
 ・デジタルの知識(技術潮流の早い中におけるトレンドの見極め)
という3つの方向性を盛り込むということが必要であり、これらがないとUXリサーチをしてもステークホルダーのユーザーモデリングも十分にできず、またユーザーモデリングができてアイデアソンで様々なアイデアが生まれ、このサービスでいける!と思ってプロダクトとしての方向性・ビジョンを決めても、法的な規制や慣習などを鑑みると実現できないとか、できたとしても十分な収益を上げることができない、といった様々なハードルが待ち構えているために計画が頓挫することになります。
医療ヘルスケア領域ではこれら様々な複合的要素を総合的にバランスよく捉え、必要に応じて専門家の力を借りるというような、非常に知識と経験、バランスを要求されるUXデザインであると言えます。

UXデザインからUIデザインへ

利用者における体験価値を向上させるUXが出来上がったとしても、次には、そのUXを実現するための具体的なアプリなどのサービスが必要となります。
利用者はどのようなサービスをどのように利用するのか・・・
その利用者の利用の流れとそれを実現するべき機能の洗い出し(ユーザーストーリーマッピング)を行い、そこから必要な機能、さらにはその機能実現のためのアプリ画面、さらにはアプリの画面デザイン(UIデザイン)を作っていく必要があります。この過程では、どのような情報をどのように出せば、利用者にわかってもらえるか。
B2Bであればマニュアルを配り、マニュアル理解のためのユーザー訓練がありました。それは業務遂行のために必要だったからです。
しかしB2Cになってくるとマニュアルを読んでくれる保証はありません。だから画面を見て、何をすればよいかを自分で判断してもらう必要があります。そのためには色、タイポグラフィー、ボタン等の配置などで利用者の心理を誘導する必要があります。UIデザインとはきれいに見せるというものではなく、利用者にいかに惑わすことなく理解してもらえるようにするか、そのような機能的側面の実現には、細部まで作り上げるということが重要になってきます。